SSブログ

饒速日命と勝速日 [宗教]

 あるドラマの番宣に道場のシーンがあり、その壁に、「正勝 吾勝 勝速日」と三行で書かれた掛け軸だか何かが見えた。
 日本神話に詳しい人ならご存じだろうが、天照大神の御子に、『古事記』の表記で「正勝吾勝勝速日天忍穂耳命」という神がいて、その名の一部と合致する。神名の核はオシホミミだから、この名を修飾する語句と言ったほうがいいかもしれない。地上に降臨する邇邇芸命の父親であり、本来ならこの天之忍穂耳命が降臨する予定だったとされる。ちなみに、邇邇芸命も正しくは「天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命」という長い名である。
 映画のマトリックスで、饒速日命の名を記した掛け軸か何かが道場に掲げられており、なぜ饒速日命なのだろうとかつて不思議に思ったことがある。天照皇太神、または鹿島大神や香取大神ならば武道場ではよく目にするものだが、饒速日命は物部氏の祖神とはいえ、とくに武道とは関係ないであろうし、また天忍穂耳命も同様に武神というわけでもない。饒速日命は表立って活躍した邇邇芸命や神武天皇の背後に隠された神、という位置にあるため、マトリックスの世界観を表象させているのだろうかと考えてみた。そして某ドラマの件は、この饒速日命とは「速日」が重なるため、単なる出来の悪いパロディだろうかと思った。
 だが正勝吾勝勝速日について調べてみると、合気道の創始者、植芝盛平が修練によって得られた境地を表した言葉、といったもので、実際の合気道道場に掲げられているらしい。植芝は大本教の信者だから、神名に由来した表現を用いたのだろう。
 ということは、マトリックスの饒速日命は、この正勝吾勝勝速日から着想を得たということだろうか。単に表記上の類似によるか、世界観の表象まで意識していたかは、わからない。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

自己責任強蚊2 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。