SSブログ

神器承継と皇室典範 [皇室]

 今月16日の朝日新聞デジタルの社説に、天皇の即位儀礼について何やら書かれているというので読んでみた。相変わらずの論調でうんざりさせられるが、気になった点を挙げてみる。
 ひとつは、戦後初となった平成の即位儀礼において神器の剣と曲玉を継承する儀式が国事行為として行われたことを、「神話に由来し宗教的色彩の濃い剣璽承継が、なぜ国事行為なのか」と疑問視している点である。言葉としては用いていないが政教分離の観点から、宗教性を問題としたいのだろう。しかし、そもそも天皇の存在が神話や宗教に基づいていることには触れていない。神話の世界観を離れて合理的に見るならば、神器に宗教性の本質があるのではなく、天皇が神話や信仰に基づいているゆえに、継承されている神器が神聖視されているのである。すなわち神器への疑問視は天皇の存在への疑問視に直結するもので、おそらくはその点をも言外に含ませているかと思われる。
 次に、この神器継承の儀式に女性皇族が参列していないことを「排除された」と表現し、先帝崩御の直後だから出席を求めなかったとする政府の答弁について「どれだけの人が納得するか。政府は時代にふさわしい姿を再検討し、考えを国民に丁寧に説明しなければならない」という。
 この儀式(剣璽等承継の儀)は皇位と神器の一体性を示すもので、まさに先帝崩御の直後、前回の場合は崩御の二時間後には儀式のための動きが見られている。周到な準備の下ではなく、哀しみの中を慌ただしく行われるのであり、身だしなみなど特に気を使わなければならない女性皇族の参加を見送ることのどこが「排除」で、誰が納得しないというのだろう。
 そして次に、「懸念すべきは、旧憲法を懐かしみ、天皇を神格化する空気が自民党内に根強くあることだ」という。天皇を神格化する「空気」とは何かというと、この社説の執筆者が挙げているのは次のようなことである。少し長くなるが引用してみる。

「最近も、天皇や皇太子の成年年齢を18歳と定める皇室典範の扱いが議論になった。天皇が未成年の場合に備え、摂政が公務を代行する期間を短くするための特例だが、18歳から成人とする民法改正案が成立すれば、この規定は不要になる。しかし保守派議員らの反発を踏まえ、典範改正は見送られそうだ。存廃どちらでも人びとの生活に影響はない。問題は、意味を失った規定を整理するという合理的な考えが退けられ、典範に手をつけるのは冒涜・不敬だとする言動がまかり通ることだ。戦前に重なる風景で、国民主権のもとに象徴天皇制があるという基本認識を欠く。危うい空気が漂うなかで進む代替わりに対し、憲法の原則や理念からの逸脱がないよう、目を凝らし続ける必要がある」

 一読して成年年齢についての規定と「神格化」とやらにいったい何の関係があるのか分かりづらいが、成人年齢の話については、皇室典範ではもともと天皇や皇太子は18歳で成年と定められ、一方で一般人の成人年齢を18歳に引き下げる改正案が提出される運びとなっている。この改正案に連動し、皇室典範の件の規定を不要として改正してはどうかという声が挙がったが見送られた、ということだ。
 この皇室典範改正の見送りを、典範への「冒涜・不敬だとする言動がまかり通」ったからとし、「戦前に重なる風景」であり、国民主権という「基本認識を欠」くもので、「危うい空気が漂」っている、というのである。
 しかし昭和二十二年に制定された現皇室典範は、三種神器についての規定がない。旧皇室典範にはあったのだが、現在は皇室の神聖性や宗教性が抑えられたものとなっており、「旧憲法を懐かしみ、天皇を神格化する」ような人間がたとえいたとしても、そんな人が神聖にして侵すべからずと崇めるような代物ではないはずだ。皇室典範という特別な法律が存在しているからには、それが神聖かどうかということではなく、民法改正に引き摺られて簡単に手が加えられるべきではないのであって、簡単に改正されることになればそれこそ危険ではなかろうか。そもそも本題は民法の改正で、皇室典範についてはあってもなくても構わない規定に過ぎないのである。
 改正が見送られたことに感じる「空気」を社説執筆者はたいそう危険視しているが、まさに空気を相手に戦っている滑稽な姿が浮かんでしまう。
 なお、以前にもここに書いたように、女性天皇を認めない現皇室典範は改正すべきだと個人的には考えている。と同時に三種神器は剣璽等承継の儀からも理解されるように、皇位と一体化しているものであることを根拠として、皇室典範に再び明記するよう改正すべきだと考える。かの社説執筆者はこのような意見を「合理的な考え」と見なして賛同してくれるだろうか。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。