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印税と契約 [雑感]

 印税2%が話題になり、そんな契約で引き受ける方も悪いといった声もあるらしい。ただ、この作家の場合はどうなのか知らないが、自分のごく僅かな出版経験において、今まで一度も出版前に契約内容を提示されたことはない。口約束すら、なかった。売れっ子や大御所の書き手ならともかく、代わりの執筆者はいくらでもいるような立場としては、金銭的な条件などはとても口に出せるものでなく、それを知ってか、編集者も敢えて触れようとしない。
 書き終えて、ゲラのチェックも終えて、印刷されて店頭に並ぶ。それから契約書を作成中だとの連絡が編集者から入り、やがて送られてきた。中小規模のいい加減な会社ではなく、誰もが知っている有名大手出版社である。
 別の有名大手出版社からは契約書すら来なかった。執筆の話を持ってきた編プロと出版社が結託したかどちらかの口車に乗せられたのか知るよしもないが、本が出たあと、両社のみで契約を交わし(後で聞いた話。単著で著作権の名義は自分なのだが)、やがて一方的に編プロから印税の六割分があなたの取り分だと連絡があって、振り込まれただけである。自分と編プロとの間に契約も事前の口約束もない。印税率は10%だったとはいえ、約半年かけての報酬が同年代の平均月収を少し上回る程度の額だった。
 とある中規模出版社では、やはり半年ほどかけて書いた本が売り出されて契約書が届き、内容を見て、いたく落胆した。印税の対象が発行部数ではなく実売部数で、しかも8%、実際に入ってきたのは発行部数の10%として想定した額の三分の一だった。
 また別の中規模出版社では、これは編著者の下での分担執筆で、増刷がかかったのは良いものの、増刷分の印税の支払いはないと編集者から告げられた。契約書でそのようになっていたか確かめていないが、いずれにしても出版後の通知である。この本、今では六刷を迎えて増刷のたびに本が送られてくるのだが、喜ばしく思っているのは出版社と印税を貰えているであろう編著者ばかりで、自分にはすでに虚しい、そして少し腹立たしいだけの増刷である。
 なお上記の印税10%というのは一昔前の話である。最近では8%でも多い方だと聞いていたが、2%とは、もうすでに出版文化とそれに関わる諸々の文化的営みに、未来どころか現在もないのかもしれない。

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