SSブログ

留美子の世界 [雑感]

 ずいぶんと遅い反応になってしまうが、国際漫画祭で功労賞を受賞したということなので、いい機会だから高橋留美子の作品について書いてみる。単なる個人的な思い出話、および賛嘆のための文章である。
 初めて高橋の漫画を読んだのは、最初に小学館漫画賞を受賞した際に「うる星やつら」の名を知ったときだから、いま調べてみると昭和55年のこと、特に期待することもなく本屋で立ち読みした。単行本の一巻から三巻あたりまでだったかと記憶している。ビキニ姿の娘の表紙を見て、たわい無いコミカルな漫画だろうと軽く落胆しつつ読んでみて、衝撃を受けた。珍しくドタバタSFであり、それでいてまとまりがあって下品ではなく、当時の少年誌では見られない面白さだった。初期の頃の絵は、正直言ってあまり上手くはない。しかし漫画を創ることの巧みさは、さすがに賞を貰うだけのことはあると感じた。この思いは今でも変わらず、作品を造り出すことの巧みさは随一だろう。
 衝撃を受けながらもそのまま帰宅した。が、鬼娘の姿が頭から離れない。初期の拙い絵にもかかわらず、強烈に魅了されてしまい、翌日、すぐに本屋へと走り、手持ちのお金で買えるだけの巻数を揃え、置いていない巻は注文までした。やがて「めぞん一刻」も刊行され、高校生から浪人生、そして大学生といった期間を、まさに共に過ごした。
 その後、「らんま1/2」や「犬夜叉」を経て一昨年に完結した「境界のRINNE」は、少年誌における高橋の長期連載漫画として、ひとつの到達点というべき作品ではないかと思う。各話の完成度の高さに、各話毎に珠玉の作品という印象を受けた。40巻も続いたというのに早期に終了してしまった感が強く、アニメ化もされて人気はあったのだろうが、もっと評価されてよい作品であろう。
 さて、件の功労賞を授与した漫画祭の主催者は、高橋の作風について「出るくいは打たれる(日本)社会で、アウトサイダーや変人を前面に押し出し、彼らにもチャンスがあることを示そうとこだわった」と述べたそうだが、魅力の本領からはずれた評価でしかない。「社会」の前に(日本)とあるのは翻訳者による補足か、元からそうなっているのかはわからないが、妙に現実の社会に対する風刺やら主張やらと絡めた理解や説明を捏ねようとするのは、まったく興醒めである。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

ゆうパックの配達人令和の言霊 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。