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信頼できない発信4 [雑感]

 大手の出版社から、その筋では知られた研究者の編著として出版された一般向けの本における、執筆者A氏の記述に見られる不適切な点を前回と前々回とに挙げてみた。その他にもいつくかあるのだが、それらを論うのが本旨ではなかったのでもう止めておく。
 言いたかったのは「信頼できない発信1」に書いたように、大手メディアが知識や情報を発信する際に、より信頼性の高い専門家に任せるのではなく、使いやすいとか人気があるとかの理由によって専門家ではない人間に任せがちであるという問題点についてである。
 件の本は一般向けとは言え、知られた大学教授の編著で、執筆者の中にも大学講師やその分野の専門的な教育を受けた者が数名いる。しかしA氏もその分野に関連した学部を出ているが、院卒ではない。もちろん院卒でなくとも専門的な知識を有している人はたくさんいるだろう。だがこれまで指摘したような不適切な記事は、専門家ならまず書くことはないものといっていい。
 そんなA氏に項目の半数近くを担当させたのはなぜか。答は明らかで、ひとつは、編集者はその筋の専門家ではないために不適切かどうか判断できないからである。専門家による編著であったとしても、このような類の本の場合、実際の編集や監修はほとんど編集者主導で行われる。
 そして理由のふたつめは、件の本を出している出版社はこれまでA氏の著作物を数多く出版しているからである。つまり編集部とA氏に太いパイプがあるということ、すなわち内容の信頼性や確実性ではなく、使いやすさが理由であろう。しかもA氏の肩書きや経歴を調べると、編集者でもあるらしい。編集部にとってみれば、これほど使いやすい人間はいない。内容の確実性は二の次であって、箔を付けるためだけに大学教授を編著者に据え、全部の項目をA氏に任せるのには時間的な問題もあってか、その教授の推薦か、もしくは多少なりとも付き合いがあるといった理由で研究者など他の執筆者をあてがったのだろうと思われる。
 本や雑誌は編集部や編集者の、テレビやラジオの番組なら局や制作会社のプロデューサーやディレクターの裁量によって作られ、発信される。監修者が付いていようと、たいていの場合は、彼らの目を通したものしか世間に発信されることはない。前回の記事に元凶は編著者やA氏だと書いたが、不適切な情報が発信される本当の元凶は彼らといっていい。
 われわれが簡単に目にし、手に取ることができる媒体による情報なんて、そんな適当なものに過ぎないわけで、ネットにおける情報と、たいして変わらないのである。

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