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夏越大祓の変 [雑感]

 六月三十日、夏越の大祓ということで、毎年恒例の某神社に向かう。
 以前にも書いたが、なぜかこの参拝に際して「変な人」と遭遇することが多い。
 今年は境内にて遭遇した。
 境内で行われている大祓の儀を参観しているとき、背後から妙な声が聞こえてきた。東南アジア系の外国人が無遠慮に会話しているのかと最初は思ったが、発言者は一人で、言葉というよりは赤ん坊の喃語に近い。しかしその喃語っぽい発声の中に時折、「おい」「なんだ」「まて」といった文句がましい日本語の単語も混じっているように聞こえる。そんな言葉をひとり発し続ける男が自分の右横に来た。
 儀式に集中したいのに参ったなあと思っていたら、自分の左横にいた人が、うるさいよ!と注意した。ああ、頭のおかしな人にそんなことを言ってもしょうが無いのに、逆ギレでもしたら俺が何かされるかもしれないのに、と少し緊張したが、叱られた右横の男は静かになった。
 注意を理解し、従うことができる精神があるということと、ひとり異常な発言を続けていたこととの関係を不思議に思いつつ、ほっとして儀式を眺めていられたが、やがてまたその男は少しずつ言葉を発し始めた。しかし儀式は無事に終わり、神職たちは終了の奉告のため拝殿へと入っていく。
 その様子を眺めているとき、すでに先ほどと同じように異様な発言を続けるようになった男を正面に目にした。五十過ぎの哀しげな顔をし、手には授与品と思しき袋をさげている。まさかこんな発言をしつつ御祈祷を受けてきたのか、と驚いた。拝殿前にいる男のそのときの言葉には、「しね」「ころす」といった物騒な言葉も混じっており、周囲の参拝者たちも、ぎょっとして身を引いている。
 しかし、そんな言葉とは裏腹に、儀式の終了と共に男は何事もないように境内を後にする。言葉だけが異常で、行動には何も問題はないのである。神社に参拝し注意に素直に従う精神と、罵倒の文句を吐き続けさせようとする悪しき精神とのせめぎ合いに生きている、哀れな人なのだろうか。

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