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子供ヘイト [見聞]

【こんなことを見聞きしたシリーズその6】

 つい先月のこと。
 駅ビルの二階から階段を降りようとしていたとき、階段横のエスカレーターから女性が一人昇ってきた。二十代後半から三十代くらいの、やや整った顔立ちだが少し派手な化粧で硬い表情をしている。そして少し間をおいて五歳くらいの男の子が同様に昇りのエスカレーターから姿を現した。
 私はその男の子を横目に、ああ親子なのかなと思いながら、階段を降りていく。しかし母親と思しき女性と同じようにその子もあまり元気な様子には見えず、また二人が距離を置いていたことに若干の違和感を覚えつつ降りていると、背後の階上から女性のヒステリックな声が聞こえた。

「あーもう、なんであんたは歩かないで立ったままなの! ほんとにもう、邪魔なんだよ、あー!」

 思わずふり返ったら、やはりさっきの女性だった。男の子の姿は下からの角度では見えなかった。
 状況からして、エスカレーターに乗って歩かずにじっとして昇っていくことを、男の子は理不尽にも痛罵されているのであろうと思われた。急ぎの用があるためにのんびりしている子供に苛ついているのかというとそうでもなく、どこかへ足を進めようと急かしている様子ではない。
 女性の言葉の前半部は、その時の気分によってはつい吐いてしまうこともあるだろう。しかし、「邪魔なんだよ」の言葉はとくに吐き捨てるような感じで嫌悪感に満ちており、最後の「あー!」も抑えきれない憤懣の醜い爆発だった。
 彼女がいる場所は大手スーパーの入り口近くで、普段は駅改札からそのまま流れてくる客が多い。そのときは人足が途絶えていた時間帯だったが、決して付近に人がいないわけではない。そんな中での出来事に驚きつつ、邪魔なんだよと嫌悪感丸出しの罵声を幼い子供に浴びせる女性の心情に慄然とし、そして罵られている男の子の心の内を思い、暗澹たる気持ちで家路についた。
 
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