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凝った装幀の悲劇 [雑感]

 ここに二冊の漫画本がある。吉田戦車の『若い山賊』、そして以前にも取り上げた、しりあがり寿の『瀕死のエッセイスト』だ。この二冊は本棚に並べず、それぞれビニール袋に入れて保管している。それは何故か。
 はじめは他の本と同じく本棚に並べていた。しかし、それから十数年が経った頃、今から五年かそれ以上前のあるとき、本棚の整理をしようとして気づいた。この二冊が隣り合った本とくっついて離れないのである。つい無理に剥がしてしまったため、隣の本のカバー、そして特に『若い山賊』のカバーは柔らかい紙質のために所々破れてしまった。
 原因は、カバー表面の文字やイラストの一部に特殊なコーティングがされており、それが劣化して溶けたためである。材質はよく知らないけれども、ちょうど木工用ボンドが固まって透明になったような質感のものによるコーティングだ。
 装幀は『若い~』が小松孝代氏、『瀕死の~』がこの業界では奇抜な装幀で評価も高い祖父江慎氏である。経年劣化で仕方ないと自分を慰めつつも、普通の表紙ならこんなことにはならなかったのにと恨めしい。
 本を買うときにはそれが漫画であろうと学術書であろうとカバーの汚れや潰れがないものを丹念に選び、頁を折ったり線を引いたりもせず、どうしても目印を付けたいときは付箋に留めて綺麗なままで保存し、どんなに下らなくても二度と読み返すことがなくとも処分せずに手元に保管していたいフェチ気味で貧乏性の自分は、あれから何年も経っているというのに、この隔離された二冊を見るたびに、小さな溜息をついている。 

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